まとめ
星像……アルビレオが綺麗に分離する。星の色もはっきりとわかる 視野角……70度を超える見掛け視界に星空が広がる。最周辺部は圧縮されて像が乱れるが、通常問題にならない 色収差……月を見ていても気になるほどの量ではなく、十分少ない
いずれも「新視界」の謳い文句に相応しい性能です。
欠点は次の通り。
満月を中央に捉えると、周辺部に円環状のフレアが発生する アイポイントはどちらかというと厳しめ パンするとグローブエフェクトが発生する
天体向けということで、この辺りは割り切ったのではないかと思います。
価格も10万円を切っており、天体観望用途では大変お勧めできる双眼鏡です。
はじめに
最近、数年ぶりに星を眺めることが増えました。 星見の際は、ビクセンのアルテスHR10.5x45WP(以下アルテス)をお供にしていました。 アルテスでアルビレオを導入したとき、長方形になってしまい、二重星として分離できませんでした。 このことをきっかけに、より高倍率で大口径の双眼鏡を天体用に導入しようと思い立ったのです。
予算はMAXでも20万円。安ければ安いほどよい 口径は50mm~70mm級であること 倍率は最低12倍、できれば15倍~20倍であること 中間部の像の尖鋭度はアルテスの同等以上であること 色収差はアルテスよりも少ないこと 良像範囲は70%以上であること
この辺りを条件に双眼鏡を探し、最終的にNFVを購入しました。
購入にあたっては、こちらのブログや、対物側の設計が共通と推測されるAPO+ 12x56IFのレビュー記事を参考にしました。
使用環境
流石にこのサイズだと、手持ちでお気楽にとはいきません。
三脚……ベルボン プロフェッショナル・ジオ N640 雲台……ベルボン QHD-G6AS, Leofoto VH-30R
- ビノホルダー……Fanaue S1
双眼鏡での観望には、ウォームギヤ式のエレベータがとても便利です。 ウォームギヤ式はラック・アンド・ピニオン式とは異なり、荷重で急に落下する心配がありません。 ベルボンのプロフェッショナル・ジオシリーズは、カーボン脚は勿論、取付部の剛性、エレベータの安定性も高く、とてもお勧めです。
地上での使用
まず、夕方に近所のコンテナを観察しました。夕日に照らされたコンテナは色収差や歪曲収差のチェックに最適な対象物です。 アルテスと比べると、歪曲収差、倍率色収差ともによく抑えられています。 アルテスも実用上問題のあるレベルではありませんが、比べると糸巻型の収差と、パープルとグリーンのフリンジが気になりますね。 NFVも色収差を探せば周辺部の色づきが分かりますが、実用上問題になることはほとんどないと感じました。 また、色再現もNFVのほうが優れています。アルテスは肉眼より若干青白くなりますが、NFVは見たままに近い色合いでした。
雲台をパンしてみると、グローブエフェクトの発生を確認できました。 また、アイポイントも若干シビアで、あっちへこっちへと振り回すと、ブラックアウトが気になりそうです。 とはいえ、天体目的では問題にならないと思います。
近所のコンテナを対象にコリメート撮影を行いました。カメラはキヤノン PowerShot G5 X Mark IIです。 被写体が近距離かつ正対していない(左下から右斜め上に見上げる角度)ので、作例としてはあまりよくない条件で申し訳ないです。 それでもピント位置の像の尖鋭さや色収差の少なさ、歪曲収差の少なさ、ボケの穏やかさなどは参考になるのではないかと思います。
左側鏡筒
右側鏡筒
天体での使用
幸いにも晴れていたので、夜に当初の使用目的の天体観望を行いました。 まず、導入しやすいヴェガを収めて、ピントを合わせます。
まず、一見して気づくのが視界の広さです。 アルテスはどちらかといえば視界の狭い双眼鏡なのですが、NFVはとても広角で、中心を見ていると視野の周辺まで視界が広がります。
そして、星がきちんと点像になることを確認できました。 30%くらいのところでもアルテスよりも尖鋭な像で、大変期待が持てます。 当然ダブルダブルスターも二重星として見て取ることができました。 IFなので左右の視度を完全に調整することができます。 星の観望にはIFのほうが楽ですね。
さて、続いて当初の目的であったアルビレオを導入します。 やや大きな黄色の像と、青い点が並んでいます。アルビレオは完全に分離して見えました。 そして、じっと眺めていると、目が順応してだんだん周辺に見える星が増えてきます。 星々の中にトパーズとサファイアが煌めている光景が浮かび上がってきて、その美しい光景をしばらく眺めていました。
そのあと薄雲が出てきてしまいましたが、短時間でも、この双眼鏡の性能を体感するには十分でした。 光害にもかかわらず、埼玉の街中でも素晴らしい光景をみることができました。
後日、満月を導入したところ、先人のレビュー通り、周辺部を一周するリング状のフレアの発生を確認しました。 満月自体の観望に影響はありませんが、惑星の掩蔽等を観察する場合は障害になるかもしれません。
まとめ
最近の双眼鏡はとにかく高いです。 そんな中、9万円という、私にも手が届く価格でこの性能の双眼鏡を出してくれたことは本当にありがたいです。 (NL Pure 14x52とかは逆立ちしても買えませんからね)
手持ちで使えるのが10倍が限界とはよく言いますが、8倍や10倍でもアルビレオのような二重星を見るには手振れが気になります。 どうせ三脚に載せるのであれば、15倍のこの双眼鏡がおすすめです。
勿論、気合が入っていてシステム全体の重さが苦にならない人はハイランダープロミナーなどの大型双眼鏡を使用されたほうが、よりよい体験が得られるでしょう。
しかし、こちらは双眼鏡に三脚、雲台を合わせても3kg台半ばで、嵩張るものは三脚だけです。 人一人で機材を担いで歩き回ることも容易にできます。
手軽さも重視している私のような方には、こちらの双眼鏡が最良の選択肢になりえると思います。